2004-01-01から1年間の記事一覧

人道的介入

人道的介入に関しては、かなり難しい問題を孕むけれども、最近読んだ本の中で、この問題に関連するものがあったことを思い出す。伊勢崎賢治『武装解除』(講談社現代新書)。 東ティモールとアフガンで武装解除を担当した人間の書いたもので、読み物としても…

スーザン・ソンタグ死去

今年はデリダも死んで、それで、ソンタグも死んだということになると、何かしらの終わりを感じさせるところはあります。何かしらの、というのは、感覚的に述べれば、メタファーをシリアスに論じる時代の、というくらいの意味で、要するに、洗練された物言い…

「司書さん、愛してる」

ヴォネガットのコラム。 http://www.inthesetimes.com/site/main/article/i_love_you_madame_librarian/ かなり暗いというか、ユーモアを保ちながら、ところどころで、やけっぱちになっているといったような感じがありますね。たとえば、「気づいていないか…

戦略なしの戦略?

ところで、引用した文章の最後のところで「このような社会の中で、知性が生きのびるチャンスがあるのだろうか」という問いかけがされているけれども、個人的には、ほとんど絶望的だとも思う。 そもそも、こうした状況になってしまうと、洗練された批判なり異…

アメリカだけか?

ところで、同時に思うのは、「チープでシンプルな社会」に対する怒りを「チープでシンプルな仕方」でしか発信できないという閉塞状況は、ある部分では、アメリカに留まるものではないんじゃないかという点だ。 例えば、小泉とか石原の言い草というのは、まっ…

内田樹の「肥満という記号」

http://blog.tatsuru.com/ 内田樹のブログは面白いので、たまに見ている。今回のアメリカ大統領戦に触れながら、こんな指摘があった。 その上で、肥満について考えたら、どうして下層の人々が「ジャンクをやめてニンジンを囓る」とか「TVを止めて本を読む…

マゾ

とはいえ、むろん、否定しているわけじゃなくて、もちろん、原理的に新しいとか言って、興奮しているわけでもなくて、ただ、こうした状況を受け入れてしまっているようなところが強くて、こういった感覚は、ある部分では、マゾヒスティックだよなって思うと…

ネットの中の他人の欲望

むろん、他人の欲望に指さされる形で自分の欲望が対象を見つけるという図式は新しくないのだけれども、その量というのが、ある部分では、新しい気がすることも確かです。 今までは、他人の欲望をなぞるとしても、それが示されるのは雑誌であったり、本であっ…

ネットライフ

他の人のブログなんかをじっくり見ている時間はないはずなのですが、今一度家でじっとしていないといけない時などは、やっぱり見てしまいます。 インターネットを導入した頃は、結局、ネットを見ると言っても、そんなに必要な情報があるわけでないし、といっ…

天皇発言

http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann/20041028/20041028-00000038-ann-soci.html 国旗と国歌は「強制になるものでない」天皇陛下 天皇陛下が、教育現場での「日の丸」の掲揚や「君が代」の斉唱について、「強制になるものではない」と話されました。…

郵政民営化

と、長々と書いてしまったので、もう止めにしようと思っていたところで、今日の日経に「郵政改革“本丸”はマクロ経済・「政治学」では解決しない」との論説を発見。基本的に、日経が経済のことばかりを考えるのは良いとして、やはり、この記事というか、日経…

「裁判」における正義

あと、イエルサレムの「裁判」における「正義」のあり方にも、きちんと注目しておかなければならないとも思う。東京裁判もそうだけれども、こうした性格をもつ「裁判」において、それこそ、歴史修正主義者の馬鹿どもが、その正当性をあげつらって何かを言っ…

行政機構の「陳腐さ」

その考えるきっかけの中で、個人的に特に関心があるのは、ひとつは行政機構の危険性、つまり、「陳腐な悪」が表象不能な悪にまで昇華される(といって良いのかどうかは分からないけれど)までの過程であり、本来ならば、『全体主義の起源』にあたるべきなの…

『イエルサレムのアイヒマン』

言うまでもなく、ハンナ・アーレント。アーレントの著作でいえば、『全体主義の起源』をいつかまとめて読んでしまいたいと思っているのだけれど、何しろ大部なものだから、今はその余裕がない。 それはともかくとして、この本も薄いけれど、それなりにへヴィ…

デリダ

特に感慨というほどのものはないのですが、デリダが死んでしまいましたね。アルチュセール、ラカン、フーコ、ガタリ、レヴィナス、ドゥルーズといったフランスの思想家の大物の最後の生き残りというか、そういった存在だっただけに、寂しいという気もします…

『ゴーリキ・パーク』

『ゴーリキ・パーク』は読み終えました。盛り上がったところで、ほかの用事が入るみたいな断絶的な読書になってしまい、どうも盛り上がり切れなかったところもあるのですが、印象を言えば、まあまあです。みんなが面白いと言うほどまでは面白くはないような…

『ゴーリキ・パーク』

今更ながら、これも読んでいます。『寒い国から来たスパイ』もそうだけれど、冷戦構造を前提としているフィクションというのは、基盤がしっかりしているので、安心して読むことができ、しかも、基盤を整えるのに手間がかからないだけ、他のところに手が行き…

『煙草は崇高である』

ウェブの古本屋を何となく見ていたら、この本を発見して、懐かしさのあまり購入してしまいました。最後の頁をみたら、97年に初版ということなので、ずいぶんと前の本になってしまったことに涙ぐみそうになりました。 当時も買おうかどうしようか迷ったけれ…

『麻雀放浪記』

『麻雀放浪記』を読み終えました。番外編は除いて、本編だけで三冊あったので、最後のほうは結構飽きましたが、興味深かったのは、敗戦直後からある程度世の中が落ち着いてきて、たぶん、朝鮮戦争の特需の時代くらいになるまでの話の流れで、だんだんと、シ…

『ボーリング・フォ・コロバイン』

ハワイに行くその前に、アメリカのことを学ぼうと考えて、テレビで『ボーリング・フォ・コロバイン』を見ました。 マイケル・ムーアについては、『華氏911』で賛否両論入り混じっており、とはいえ、僕は「見ても見なくても、ブッシュが馬鹿なことは分かっ…

利子→元本

あまり詳しくいえないのですが、仕事上、消費者金融だとか闇金から借りている人と会うことが多くて、その中のいくらかは60歳だとかを超えた老年期の人たちで、その人たちが二百万円から五百万円くらいの借金を背負って、ほとんど年金も全部取られるといっ…

ユニバーサルデザイン

というのであれば、酔払ってしまった時にも、きちんと使えるようにしてください、インターネットよ(字余り)。

受信料不払いしかない?

といったわけで、今回、NHKに対して法的責任を問うことは難しいようです。監督官庁がNHKに対してきちんとした処分をしなかったということにつき、行政不作為の確認訴訟という方法も考えたのですが、これもたぶん駄目でしょう。もし、これで、本案判決…

NHKの編集権

NHK職員の不祥事というか業務上横領について思うのは、まあ、ありうるだろうなということです。組織が大きくなればなるほど、個人の裁量権が大きくなるものだし、チェックの目も届きにくくなるわけだから、そういうことは起こりうるのです。 だから、その…

斜めから見ない

一般的に言って、こういった場所での話しというのは、マスメディアが述べていることを受けて、それをずらしたり斜に構えたり、そうでなければ、やる気を出さないで語ったほうが良いと思うのです。金をもらっているわけではなくて、好きでやっていることなん…

川上弘美『センセイの鞄』

別に、川上弘美には恨みなどはないのですが、『蛇を踏む』だとか『溺レる』だとか『龍宮』だとかは読んでいるのですが、さっぱり意味が分からなくて、ただ知り合いの中にとても褒めている人がいたので、読むものがない時に読むといった程度でした。 そうした…

『美味しんぼ』最新刊

『美味しんぼ』最新刊を購入したのは、もちろん、ポジティブな感じを演出しようとしたわけではなくて、ただの惰性です。 なるべく褒め称えたいのですが、結局、全然駄目ですね。毎回、駄目だと分かっていて、買って、読んで、がっかりするのは何なんでしょう…

保坂和志『アウトブリード』

保坂和志は大好きで、ほんとうに好きで、『季節の記憶』などは二ヶ月に一回は読まなくてはいられないくらい好きで、実を言えば、その文体を真似しているところもある。そんくらい好きなので、普通の評論がいかに訳がわからなくても、全然オッケーで、事実、…

中原昌也『待望の短編集は忘却の彼方に』

中原昌也、この作家のどこが良いのかと言われても、困るのだけれど、さしあたり、書くことに対する後ろめたさが好きとだけ言っておきたい。例えば、こんなところ。 「いや、作家なんてもうとっくに廃業していますよ。当然です。うまく編集者や読者をだまして…

つげ義春の失踪

こうなると、もう逃げ込む先はフィクションしかないとも言うべきなのですが、あいにくのところ、今月はやたらと金を使ってしまい、本を買うお金がなくなってしまい、逃げ込む先もなくなってしまいました。 それで、やむをえないので、本棚にある本を手にとる…