2005-09-01から1ヶ月間の記事一覧

デッドエンドを超えて

恐らく、こういった具合に考えるのが一番つじつまがあうと思うのだけれども、アトムスーツというファンタスムの外殻は、チェルノブイリの人々によって、裂け目を入れられた。そして、「太陽の塔、乗っ取り計画」によって、ヤノベは、その裂け目を切り開いて…

もうひとつの出口

ヤノベによれば、その創作の(ファンタスムの)原点となったのは、大阪万博の解体現場であったという。ヤノベ少年の目には、様々なパビリオンが解体されていく光景が「未来の廃墟」を思わせたという。そういった経緯もあったためか、ヤノベは、ファンタスム…

アトムスーツの変容

恐らく、予想外のことであったと思われるけれども、ヤノベは、この郊外の未来において、そこに居住する人々に出会うことになる。原子炉から30キロメートル圏内にある強制退避区域とされるゾーンは一般の人間の立ち入りは禁止されている。だから、当然なが…

郊外の未来へ

ヤノベケンジは、1997年から「アトムスーツプロジェクト」を開始する。このプロジェクトにおいて、ヤノベは「アトムスーツ」に身を守られながら、砂漠、タイムトンネル、大阪万博跡地などを訪れることになるわけだけれども、ヤノベが最初に訪れたのは、…

郊外生活者のファンタスム

それにしても、この不可視の危険とそれに対する不安の意識、それから逃れるためのプロテクターという図式は、どこかで見たことがなかっただろうか。突飛な連想という人もいるかもしれないけれど、でも、僕たちは、ジョン・チーヴァーの短編小説「ランソン夫…

目に見えない危険とアトムスーツ

そもそも、ヤノベが恐れている「放射能」とは何であろうか?彼は何から身を守りたいと思っているのか。もちろん、文字通り、それは「放射能」であると考えもあるだろう。言うまでなく、それはひとつの解釈であり、正しいと思う(事実、ヤノベは、美浜原発事…

サヴァイヴァルという妄想

この本を概観するかぎりにおいて、ヤノベケンジの作品には、ふたつのテーマがあるように思う。 ひとつは、身体ないし自己の保護とでもいえばよいようなテーマだ。例えば、「タンキングマシーン」がある。これは、身体を包みこむような機能をもった彫刻とでも…

ヤノベケンジとは何か?

こうして、僕たちは、時として、遠くから響いてくる「ジャイアント・トらやん」の「ががあー」という叫びに苦笑させられながら、「キンダガルテン」と名づけられたヤノベケンジの企画展示を後にすることになる。 それにしても、その展示の全てをみたところで…

太陽の塔、乗っ取り計画

次の部屋に移ると、映像が流れている。どこかしらで不穏な雰囲気に満たされた映像ではある。でも、なにが起こっているかはすぐには分からない。排気口だとか下水道のような場所のなかで、アトムスーツを着た人間がもがいている。それが最初に分かったこと。…

森の映画館

部屋を移る。すると、なにやら暗がりの中に「ヘンゼルとグレーテル」に出てくるような小屋がおかれている。小屋の傍らには、先ほどの黄色い「アトムスーツ」を着用した腹話術人形が立っている。解説によれば、人形に装着されたガイガーカウンターが自然界に…

20世紀のマンモス・プロジェクト

まず、「ロッキング・マンモス」がある。鉄の塊のようでもあるが、そのフォルムはマンモスを形作っているのが分かる。そして、解説の言葉を読み、僕たちはなんと言葉を発してよいのだろうとふたたび途方にくれることになる。 まず、それは「ヤノベ乗用の愛車…

ヤノベケンジ「キンダガルテン」

でも、企画展に脚を踏み入れるや否や、僕たちは途方にくれることになる。クラッシックを聴いていたつもりが急にスウィッチが切り替わって、ヒップホップになったかのような眩惑。常設展示と企画展示のあいだには、リズムと言い、メロディーと言い、まったく…

豊田市美術館の午後

谷口吉生の設計した美しい建築物、豊田市美術館に入ると、まず、僕たちは、柔らかで明るい光のなかで、ジョセフ・コスースの「分類学(応用)No.3」と名づけられた壁面を目にすることになる。数々の哲学者や思想家の名前が記された巨大な壁面を見上げて…

2005年のサロン ヤノベケンジ 前編

ヤノベケンジ1969‐2005作者: ヤノベケンジ出版社/メーカー: 青幻舎発売日: 2005/08メディア: ペーパーバック クリック: 11回この商品を含むブログ (16件) を見る