太陽の塔、乗っ取り計画

 次の部屋に移ると、映像が流れている。どこかしらで不穏な雰囲気に満たされた映像ではある。でも、なにが起こっているかはすぐには分からない。排気口だとか下水道のような場所のなかで、アトムスーツを着た人間がもがいている。それが最初に分かったこと。でも、なにが起こっているか分からないから、ヘッドフォンをつけてみる。すると、ようやく状況が掴めてくる。
 大阪万博の跡地にある万博公園には、岡本太郎が作った太陽の塔が残されている。その塔の内側に、アトムスーツを着用したヤノベが入り込み、太陽の塔の目玉の部分に侵入しようとしているのだ。内側は錆だらけ。しかも、アトムスーツを着ているから動きづらい。ようやく、ヤノベが目玉のところまでたどり着いても、まず、風が強くて飛ばされそうになってしまう。そこから落ちたら、冗談ではすまない。なにしろ、地上70メートルの場所にその目玉はある。さらに、公園を巡っている警備員も気にかかる。許可をとっていないから、そんな姿が見つかったら、たいへんな騒ぎになる。だから、ヤノベが目玉のところに出現するのを撮影しようと待機しているカメラマンと携帯電話で「警備員のおっちゃん、どうしてる?」と確認を取ったりもする。
 こうした困難を乗り越えて、ともかくも、ヤノベが目玉のところに出てくる。そして、カメラマンと連絡をとる。「この格好で、ええか?」とヤノベ。「いや、ちょっと格好悪いです。」とカメラマン。「この格好はどうや?駄目か?」、「いや、意外と良いです」、「そうかあ、じゃあ、これで」と、真剣なのかふざけているのか判然としない会話が続けられ、ついに、アトムスーツ姿の男が太陽の塔の目玉の部分で立ち上がっている写真が撮られることになる。これが「太陽の塔、乗っ取り計画」という映像の概要だ。