アメリカだけか?

 ところで、同時に思うのは、「チープでシンプルな社会」に対する怒りを「チープでシンプルな仕方」でしか発信できないという閉塞状況は、ある部分では、アメリカに留まるものではないんじゃないかという点だ。
 例えば、小泉とか石原の言い草というのは、まったくをもって、「チープでシンプル」であり、キャッチーですらある。そして、これに対して、国会でも、マスメディアでも、それなりの批判はされている。でも、その批判が有権者に影響するということは少ない。そういった批判は複雑すぎて(というほどでもないとも思うけれど)、ワイドショウばかりを見ている人たちには、有意な記号として認識されないからだ。
 翻って、郵政民営化については、その力点が何処におかれるかは別として、賛成する人が多い。それは、郵政に対する異議申し立てが「無駄を省こう」という「チープでシンプルな仕方」で発信されているためなんじゃないかとも思う。
 こういう図式というのは、まさに「誰にでもわかる単純な仕方」で表現がなされないかぎり、きちんと理解してもらえないというどん詰まりの状況が、アメリカのみならず日本にも存在するという証左になるような気がするけれども、どうだろうか。