受信料不払いしかない?

 といったわけで、今回、NHKに対して法的責任を問うことは難しいようです。監督官庁がNHKに対してきちんとした処分をしなかったということにつき、行政不作為の確認訴訟という方法も考えたのですが、これもたぶん駄目でしょう。もし、これで、本案判決が出るならば、表現の自由VS国民の知る権利の利益衡量という感じで、その判決は面白い読み物になるとは思うんですが、それ以前の訴訟要件レヴェルで議論が終了するように思います。
 それで、結局のところ、どうなるかといえば、NHKの法的責任を問うことは無理だと思います。「編集権の問題」という点については、法的には誤った議論であるとはいえ、残念ながら、それ以外の要件は満たさない。
 その一方で、思うのは、NHKの受信料を納付するということが法律上決まっているにもかかわらず、今回のように、NHKの行為が誤っている場合に、法的になんの方策もないのはまずいんじゃないかということです。つまり、受信料を支払っている視聴者が何らかのコントロールを行えるようにするのが、NHKという特殊法人については必要なんじゃないかということです。
 もちろん、今回の国会の参考人質疑も国会という民主的な機関がNHKに統制を及ぼしているのだから、その点につき、まったく法的な配慮がなされていないというわけはではないけれども、その一方で、それだけじゃあ生ぬるいので、きちんと公共放送の姿勢を正したいという時に、何かしらの、例えば、住民訴訟みたいな形の訴訟形態が準備されていても良いんじゃないかと、そのように思います。現時点においては、こういう制度は整っていないのが残念というほかありません。
 そして、こうした制度が整っていないから、ある部分では、受信料不払いのような筋違いの議論にスライドしていく人も出てくるように思います。ただ、これについては、確かに、気持ちの上では分かるんだけれども、やはり筋違いとしか言いようがない。もし、筋を通すとすれば、住民訴訟のような訴訟形態をNHKに大しても行うことができるような立法措置を国会議員に対して求めていくという感じになると思います。