『麻雀放浪記』

 『麻雀放浪記』を読み終えました。番外編は除いて、本編だけで三冊あったので、最後のほうは結構飽きましたが、興味深かったのは、敗戦直後からある程度世の中が落ち着いてきて、たぶん、朝鮮戦争の特需の時代くらいになるまでの話の流れで、だんだんと、システムが固定化してくると、プロの麻雀打ち(っていうのか?)が一人で生きていくことが困難になっていくという描写で、これは映画の『仁義なき戦い』とパラレルな考え方で、ある部分では、敗戦直後から朝鮮戦争くらいまでのあいだにアンダーグラウンドで生きていた人たちには、そういったメンタリティーみたいなものが共通しているんじゃないかという気もしました。
 事実、そういったメンタリティーみたいなものは、坂口安吾の作品を時系列に沿って読んで行くとやはり感じられます。こういった感想は直感みたいなものなので、誰かが敗戦直後から日本型システムが再構築されていくまでの間の文化的なパラダイムを新歴史主義的な形で論じてくれないかなとも思います。そういうのは、第二の敗戦と言われている今の時代にも大きな示唆を与えてくれるような気がするので。