『ゴーリキ・パーク』

 『ゴーリキ・パーク』は読み終えました。盛り上がったところで、ほかの用事が入るみたいな断絶的な読書になってしまい、どうも盛り上がり切れなかったところもあるのですが、印象を言えば、まあまあです。みんなが面白いと言うほどまでは面白くはないような気もします。
 前半の社会主義の強烈な官僚機構の中で困難な捜査を続行するというあたりは、なかなか気にいったのですが、後半部分になると、「やはりな」みたいな流れになっていって、最後のほうになると、悪い意味で「おやおや」といった展開になってしまったのが惜しいところです。
 前半部分の官僚機構内での対立っていうテーマでいうと、『推定無罪』にちょっと似ているところがあって、『推定無罪』はそのままのテンションで最後まで突き抜けてくれるという点で、個人的には『推定無罪』のほうが面白いという結論になります。
 それにしても、これを読んでいて思ったのは、憲法22条で保障されている「居住・移転の自由」って、本当に大切なんだなあという素朴な事柄。そういえば、東欧が90年代の最初に民主主義国家になったとき、東欧の人が何を一番嬉しいかと尋ねられ、「何処にでもいけることさ」と言っていたシーンがあったことを思い出す。当時は比喩かと思ったけれど、実感だったんですね、ということを『ゴーリキ・パーク』を読んでいて思いました。