わがうちなるヤンキー

 最後に、個人的なことを書くと、『SEX』の連載がされていた時期、都心の私立高校に通っていた。バブル経済が崩壊する直前の話で、その文化的な状況は、少なくても、ヤンキーとはほど遠い場所にあったはずだった。事実、東京の北のほうに住んでいて、未だに、ボンタンを履いている人間は露骨に馬鹿にされ、放課後になると、多くの人間が渋谷にラルフ・ローレンのシャツとコールハーンの靴を身に着けて、渋谷に出かけていった(まあ、僕は違ったのだけど)。
 でも、同時に、そのような時代でも、クラスの人間のなかで、『SEX』に人気があったことを憶えている。いや、正直にいえば、僕自身もまた、この漫画を真正面から受け止めていたところがある。「かっこう良いな」と。とすれば、もしかしたら、当時、どんなにあか抜けて見せようとも、僕たちは、ラルフ・ローレンよりも、ボンタンを履きたかったのではないかという気もするところもある。