ロンドンのテロ

 ロンドンでテロが起こったようです。
 英国政府の施策については、コメントができるほど情報を集めていないし、英国には、素晴らしい社会があるとも、とても思えない。どちらかと言えば、結構、息苦しい場所なんじゃないかと思うところもあります。
 さらに言えば、イラクについての決断の中で、ブレアは、歴史的に、かなり誤った判断をしてしまったようにも思えてならない。その結果として、今回のテロがあるのかもしれない。情報がないので、本当は、なんとも言わないのが正しいと自分でも思う。

 でも、ひとつだけ、どうしても言いたかったのは、今回のテロに際して、ブレア首相が行った会見は、きわめて優れたものであって、これほどまでに洗練されたディスクールを使うことができる政治家を選ぶことができる国民というのは、本当に成熟した人たちなんだろうな、というイメージを僕に与えたということです。
 その表情は、悲痛を漂わせながらも、それを隠すかのように真剣なまなざしを有している。そのまなざしは、しばしば下に向けられることによって、被害者に対する悲しみを表現すると同時に、まっすぐと前を向くことによって、政府は、毅然と社会の秩序を守るというメッセージを見ている者に与えます。
 同じ語形の文章を繰り返しはしたものの、その繰り返しは、結局のところ、国民の動揺と同調するものであって、決して不快ではなく、その後、テロに屈しない政府を訴える際には、ひとつひとつ明瞭に響くような言葉が選ばれ、しっかりとその言葉を発音し、見ている者に政府に対する信頼感を持つように促す。

 会見を見ていて、こういったことの全てに非常に感銘を受けました。もちろん、だからといって、英国政府を支持するとか、そういった問題ではなくて、あのような状況下で、あのような会見を行うことができるという、その技術の高さに感心をしたのです。あのような会見を見ると、イギリス人というのは、きちんと言葉を大切に使っているんだなと、そういった印象を見ている者に与えます。
 翻って、日本の現首相の言葉の貧しさは、ほんとうにがっかりさせられる。あんなのが日本を代表すると思うと、外国から「日本人っていうのは、騙されやすいんだな」というイメージをもたれてしまうような気がして、非常に悔しいところはあります。