『その名にちなんで』

 ジュンパ・ラヒリがとても技術の高い小説家というのは『停電の夜に』で証明されていたものだから、この本を読み始めるときも、その点については、けっして感心するのは止めようと決意していたのだけれど、やはり溜息がでるくらいに技術の高い小説家だと思う。
 もちろん、ただ技術的に上手だけならば、我侭な消費者の僕は「まあ、別に」という感じで流せるのだけれども、その技術が、つまらない感傷を避けて、より深く、心のやわらかいところまで、何らかの感慨を届けるために使われているものだから、卓越していると述べる他ない。お勧めです。