『野中広務 差別と権力』

 『野中広務 差別と権力』が面白かったです。どういう本かと言えば、野中広務の評伝なんですが、結構、野中は気になっていた政治家で、田中角栄ばりのコテコテのばら撒き政治をやるかと思えば、憲法九条の擁護に廻ったり、となかなか捉えどころのない感じがあったのですが、これを読むと、どうしてそうなるのかというのが何となく分かります。政治家の評伝なんて読んだことがなかったんですが、それなりに面白いものは面白いですね。地方政治から成り上がって行くという図式はビルディングスロマン的な楽しみもあります。
 また、僕らの世代では(さらに言えば、僕が住んでいる地域では)、部落差別というのはなかなか掴みにくいものですが、これを読むと、どのように人の人生に部落差別が作用するかという点がかなり具体的に描かれていて、その意味でも、勉強になりました。「水平社宣言」を全部読んだことがないというか、最後の部分を社会科の資料集でしか読んでいない僕にとっては、最初の「宣言」の引用から言って、かなりショッキングでした。